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小泉首相の対金正日2回目の交渉について

 投稿者:吉野幸生  投稿日:2004年 5月26日(水)07時08分50秒
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  小泉首相の2回目の北朝鮮訪問の発表があったとき(5月14日)、厭な気持がしました。小泉首相と金正日を取り巻く状況が2年前とは大きく異なることが、素人目にも明らかだったからです。
2年前に金正日は、悪の枢軸国家としてブッシュに名指しされ、アメリカの軍事力の圧倒的な力をアフガンで見せつけられ、追い詰められていました。しかし現在、追い詰められ余裕を失っているのは、いまだに拉致被害者家族の帰国を実現できない小泉の方であり、金正日の方ではありません。良い期待などとても持てないと思いました。
結果は22日にTVで報じられたとおりですが、世論の反応は意外に小泉に好意的で、「首脳会談を評価する」が65%にのぼり、内閣支持率は48%から56%に上昇したそうです。(25日・日経新聞)
本来最初になされるべきは、今回の交渉を外交交渉としてどう評価するのかという議論のはずですが、子供5人の帰国の話にもっぱら関心が集まり、「不満はあるが、2家族が再会できて、まずはめでたい」という気持なのでしょう。蓮池・地村家や蘇我ひとみさんへの密着取材が続いていることが、国民の関心のありどころを示しています。
私もTVのニュースで彼らの記者会見を見ましたが、質問に答えて一語一語言葉を選んで語る彼らの表情と、拉致家族の箸の上げ下げまで「報道」するマスコミの太平楽の落差が、北朝鮮の厳しさを知る者と「平和国家・日本」の落差のように思えてなりませんでした。
さて、今回の外交交渉を評価するに際して、まず両者の得失を考えてみます。
日本の得たものは5人の家族の帰国と行方不明者10人の再調査の約束です。一方、北朝鮮の得たものは25万トンの食糧援助や1千万ドル相当の医薬品、経済制裁を加えないという小泉の約束などですが、見逃してならないのは5人の家族を帰すことにより、北朝鮮が負い目を清算したという事実です。
拉致被害者の子供たちを抑留していることは北朝鮮にとって、対日カードであると同時に国際的な負い目であり、どこかで抜かなければならないトゲでした。その負い目のトゲを小泉に手土産持参で抜きに来させることに成功し、国交正常化交渉の再開を約束させ、曽我さんの家族と行方不明者調査という新たな「人質」さえ手に入れたのですから、金正日としては笑いが止まらないはずです。
北朝鮮は交渉の主導権を握り、これから先どう転んでも損はない。日本側の不誠実な対応や約束不履行を責める彼らの紋切り型のせりふが、今から目に見えるような気がします。今回の小泉の訪朝が外交交渉として大失敗であったことは、時間が経つにつれて明らかになることでしょう。
それでは、これからどうするべきなのか、駆け足で私見を述べます。
第1に国交正常化交渉のテーブルに着くにあたり、不明者10人の行方の「完全解明」を前提とし、いかに非難を浴びようとも「完全解明」なしには正常化交渉を進めないことです。交渉に当たる者は、北朝鮮の役人の驚異的な粘り強さと羞恥心の無さを徹底して学び、発揮すべきです。
第2に、日本の中で主張されるであろう「友好親善を進める中で問題を解決する」という議論の迷妄を批判し、世論の分裂に備えること、
第3に、今後政府から、国交正常化交渉の阻害物として扱われかねない「拉致被害者家族の会」を、孤立化させないように支援していくことです。
国際交渉は生き物ですから、国際環境の変化の中でこれからどのように変わるか解かりません。当面できる手立ては限られていますが、粘り強く持続し、失われた機会の回復を待つことが大事だと
思います。
 

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