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断想(HPから移設)

 投稿者:藤井一行  投稿日:2006年 4月26日(水)10時45分18秒
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  2003.1.26

 長堀祐三先生(慶応義塾大学教授)より最新刊の『初期中国共産党群像』1をいただいた。
副題は『トロツキスト鄭超鱗回憶禄』。待望の書物である。中国問題を大きくあつかっている
トロツキーの『コミンテルン綱領草案批判』の精読・翻訳にとりくんでいる私は、そのトロツ
キーが中国革命にどのように貢献したか、中国の革命家たちにどのように受けとめられていた
かに当然、深い関心を寄せていたが、中国語が読めず、関係文献にも暗い私には、まことにタ
イミングのいい、ありがたい邦訳の出現であった。長堀先生にはすでに、鄭超鱗の諸著作の翻
訳や論攷、陳独秀の諸著作の翻訳など(『トロツキー研究』28号、Spring-1999, 39号、Winter
     2002、所収)があり、私はそのお仕事にも恩恵を蒙っている。

 いただいたばかりで、まだ読了していないが、「日本語版への自序」を読んでまず感動した。
それは、鄭超鱗がソ連解体後の1994年に用意したという序文で、いわゆる<社会主義の滅亡>に
    ついてつぎのような一節を記していたことである。
 「私や私の世代の者たちが政治活動に身を投じたのは、「十月革命」をメルクマールとする世
界革命の最初の高揚に影響を受けてのことと、本書から見てとれよう。この高揚はしかし、すで
に消え去ったのである。それは形式的には十月革命の産物たるソ連という国家が一九九一年に減
亡したことをもって明々白々のものとなったのだが、実際には革命成功後、十年にしてすでに消
え去っていたのである。一九九一年に消減したのはその影にすぎない。このことに一部の人々は
号泣し、また他の人々は「杜会主義は破産した」と歓呼の声をあげた。しかし、泣くことはない。
消え去ったのは最初の高揚にすぎず、いつの日にか必ずや次の高揚が訪れるであろうことを知る
べきである。歓呼の声をあげた人たちは早とちりの誹りを免れまい。社会主義はいまだ破産して
いないことを知るべきである。なんとならば、今に至るまで、世界のいかなる地域においても
    「杜会主義」は実現したためしがないからである。」(p.17-18)
 社会主義は終わったとか、社会主義の体制は冷酷・無慈悲であるなどと、あたかも社会主義体
制というものが存在していたかのように語る歴史学者や政治学者があとを絶たないだけに、<社
    会主義>中国に生きたこの老革命家(1998年他界)のことばは傾聴に値する。

***
いささか旧聞に属するが、日本におけるトロツキー研究の先達である上島武先生(大阪経済大
    学教授・前同大学長)は、トロツキーの『ロシア革命史』の拙訳について『ユーラシア研究』
    という雑誌の最新号(第27号、2002年11月)に書評を書いてくださった。

     そこで氏は、ロシア革命について次のように記している。
    「一考すべきは、今日ロシア革命に向けられている大方の批判と清算的評価は、革命がその後
    経験した堕落・変質の諸結果によるものであって、堕落・変質ともっとも精力的に闘ったのがトロ
    ツキーであったこと、そして、これが是正されぬ限り、革命の挫折もソ連の崩壊も避けられない
    としたのは、ひとりトロツキーのみであったということである。」

     まったく同感である。

     そして、私の訳業についてはつぎのような評価をいただいた。

        「われわれは望みうる最高の新しい日本語訳を手にすることができた。
       特筆すべきは訳者・藤井一行氏によって行われているテキスト類の比較対照と、
       その入念きわまる吟味である・・・従来の山西訳がマックス・イーストマン訳
       の英語版を底本にしていたのに対し、新訳は各種ロシア語版に始まり、
      トロツキー自身による修正原稿までを参照している。」
       「新訳書は翻訳大国日本が生んだ翻訳文化を象徴する新たな金字塔である。
       訳者に深い敬意を表するとともに、広範な読者を得ることを期待してやまない。」

    訳者としてまことに身に余る光栄である。多年にわたって訳業に心血を注いだ苦労が
   氏によるこのような評価で報われた思いである。

    『ユーラシア研究』は『ソビエト研究』の後継誌である。後継誌とはいえ、久しく共産党
   系と目されていた「ソビエト研究所」(現「ユーラシア研究所」)の研究誌に、問題視され
   る(共産党首脳によって)著者の書物の、問題視される訳者の訳業にたいする、これまた問
   題視される学者の書評が掲載されるなどまったく画期的なことである。

    『ユーラシア研究』はどうやら研究・編集姿勢で明らかに『ソビエト研究』の「党派性」と
   絶縁したようである。同誌最新号の「編集後記」はそのことをいわば公然と明らかにしている。
   そこには、「編集委員一同」の名で、特定のテーマをタブー視しないこと、筆者の政治的立場
   にかかわりなく、真理にたいして誠実である限り、掲載を是とする旨を宣言し ている。

    ロシア研究者の発表の場が少ない現状で、同誌のそうした姿勢は大いに評価されていい。
   <共産党だけが真理を独占する>ような時代は、代々木周辺でも終わりつつあるのかもしれない。


2003.02.16

プリコフスキーの金正日にかんする本

 先頃ロシアを訪問した金正日の世話役をつとめたプリコフスキーの金正日にかんする本の一部を読む機会があった。プリコフスキーは、ロシア大統領の極東地域全権代表で、つい最近、小泉首相がハバーロフスクで会談した相手である。『金正日とロシアを旅する』という書名である。モスクワの知人に依頼して、その一部をインターネットで送ってもらった。その一部のつぎのような記事があって、唖然とした。

Глава  КНДР– глубоко прочувствовал ситуацию в России. В последний день своего визита, когда поезд прибыл на станцию Хасан,  Ким Чен Ир направил
Президенту России телеграмму, с нескрываемой искренностью написал: "Я
Вам желаю, Владимир Владимирович, сделать в России то, что не сумели
сделать коммунисты". Эта фраза меня поразила, потому что она выходила
за рамки официальных, строго выверенных протокольных выражений. Как
мне кажется, Великий Полководец увидел ту Россию, в которой наконец-то вопло
тятся мечты многих поколений о светлой, радостной жизни.
金正日もとぼけた男なら、プーチンの全権代表もお粗末な人物である。このような人物に拉致問題の解決で奔走してもらうなど望むべくもない。

http://ifujii.com

 

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